アゴが痛い・カクカクなる

顎関節症(がくかんせつしょう)の患者さんは多いですか?

食いしばり、噛みしめからくる顎関節症が多いですね。
その場合はナイトガードというマウスピースの処方がすごく多いですね。
保険診療で1週間もあれば出来ますし、急げば翌日渡せる場合もあります。
歯ぎしり食いしばりは、日中は意識すれば何とか防げますが、夜は無意識なので防げないですよね。

自分で「私、食いしばっていますか?」「歯ぎしりしていますか?」とくる方はいるのですか?

いないですね。
「家族から指摘されて」「歯ぎしりがうるさい」という理由で来る方が多いです。
また「朝起きた時にアゴが痛い」からネットで調べたら、「歯ぎしり食いしばりが原因」と出たからと「そうかもしれない」とくる方もいます。

何はともあれ、ご自身がネットで調べてくる方が多いんですね。

今「わからないから全部先生にお任せで」という方は、ここらへんにはいないです。(笑)

顎関節症とは?

顎関節(がくかんせつ)は、口を開け閉めする時に使う関節で耳の穴の前あたりにあります。

顎関節症は、この部分が「痛い」「大きな口を開けられない」「口の開け閉めがスムーズにできない」「カクカク・バキッ・ザリザリ・ミシミシという音がする」などが主な症状です。
発症する割合は女性の方が多く、男性の約2~4倍といわれています。

顎関節症の副症状には、頭痛、肩こり、めまい、耳詰まり、鼻詰まり、首の痛み、食いしばりがあります。

顎関節症の診断は、顎関節や筋肉の痛みや、口の開けにくさ、関節雑音のうちの一つ以上が当てはまり、それらの症状が親知らずや他の炎症よるものではないと確認する必要があります。

顎関節症の症状別分類

症状別には、下記4つの分類が出来ます。

1. 顎関節痛障害(がくかんせつつうしょうがい)

顎関節自体の痛みが主な症状

2. 顎関節円板障害(がくかんせつえんばんしょうがい)

関節円板(かんせつえんばん:顎関節の中の骨と骨の間にあり、クッションの役割をしている)にズレが生じ引き起こされるもの

3. 変形性顎関節症(へんけいせいがくかんせつしょう)

顎関節を構成する骨が変形していることによるもの

4. 咀嚼筋痛障害(そしゃくきんつうしょうがい)

あごを動かす筋肉自体に痛みが生じるもの

上記に加え、昨今は説明のつかない社会的なストレスが痛みの原因に関係しているともいわれています。

顎関節症の原因は?

日常生活の中で、顎の関節や筋肉に負担が複合的に掛かり発症するという説が有力です。
顎の関節や筋に負担がかかる要因は以下の9つです。

1.元々の顎関節や顎を動かす筋肉の構造的弱さや関節円板のずれ

2.噛み合わせの悪さで顎の関節や筋肉が正常な動きをせず、顎に負担がかかる
3.歯ぎしりや食いしばり
4.精神的ストレス(精神の緊張は、筋肉を緊張させます)
5.顔面打撲や事故による外傷
6.唇や頬の内側をかむ癖、爪を噛む癖、頬杖をつく、猫背などの不良姿勢、うつ伏せ寝などの不良習癖

7.硬いものをよく噛むことによるアゴの酷使、左右どちらか一方でばかり噛む癖がある
8.管楽器やバイオリンなどの楽器をしている

9.TCH(Tooth Contacting Habit トゥース コンタクティング ハビット:歯の接触癖)

人間は口を閉じていても上下の歯は接触していないのが普通ですが、口を閉じていても上下の歯が噛んでいる癖のある方がいます。
その状態は、顎の関節と筋肉に負担をかけ続けます。

これらの9つの要因が複合的に重なり顎の負担が耐えきれなくなると、顎関節症の症状が出ます。

治療は医学的アプローチだけでなく、アゴの不良な生活習慣も治す必要があります。

顎関節症の治療法と家庭療法について

下記のいずれも医師の指導のもとに行うことが大切です。

理学療法

  1. 患部のマッサージや湿布
  2. レーザー照射等の物理療法
  3. 顎関節の筋肉や靭帯などの柔軟性を改善するストレッチ
  4. 開口量を増大させる下顎可動化訓練などの運動療法
  5. 歯ぎしりが強い方は上の歯にマウスピースをつけるスプリント療法

※痛みの激しい急性期には、理学療法は避け消炎鎮痛薬を先行して用い痛みが少しやわらいでから行うと良いでしょう。

不良習癖の改善のための生活指導

  1. 大きな口を開けない
  2. 硬いものやスルメのような長く噛まないといけないような食べ物は避ける
  3. うつ伏せ寝や頬杖をやめる
  4. 猫背を正し姿勢をよくする
  5. バイオリンや管楽器の演奏を一時的にやめる
  6. リラックスに努める

家庭療法(セルフケア)~「急性期」と「慢性期」に分けて考える必要があります

「急性期」
痛みの強い急性期のセルフケア

  1. 食品は小さく切り分け、大きく口を開けないで済むサイズにする
  2. スルメやフランスパンなど噛み切るのに力や時間がかかるものは食べない
  3. あくびは、大きく口をなるべく空けないようにする
  4. 氷水を入れたビニール袋を当て10分程度冷やす※冷やしすぎない、10分以内に抑える
  5. 冷却後、ゆっくり無理のない程度で口の開閉運動を行い、顎の関節を動かす(筋肉を引き延ばすイメージで)繰り返してこれを1日何回か行う

「慢性期」
痛みが少し和らいだ時のセルフケア

  1. 蒸しタオルを患部に5分当てて温める
  2. 親指の付け根や2~3本の指先で、ゆっくり押し回すようマッサージする(痛みを強く感じるほど激しくマッサージしない)
  3. 無理ない程度に関節を動かしたり、筋肉を引き延ばす訓練を行う

※間違った家庭療法を行うと症状の悪化を招きますので、歯科医師の指示のもと適切に行ってください。

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