【健康のヒント】発酵と腐敗、実は紙一重?お口の健康にもつながる違いとは

こんにちは!新橋赤レンガ通り歯科クリニックの院長、後藤です。

今回は、日々の食生活と健康、そして実はお口の健康にも関わりの深い「発酵」と「腐敗」の違いについてお話しします。

どちらも「微生物の働きによって食べ物が変化する現象」なのですが、決定的な違いは、人間にとって「有益」か「有害」かという点にあります。

発酵と腐敗、3つの違い

項目発酵 (例: ヨーグルト、味噌、納豆)腐敗 (例: 食べ残し、賞味期限切れの食品)
1. 人間への影響有益:風味や旨みが増す、栄養価が高まる、保存性が向上する。有害:悪臭がする、見た目が悪くなる、食中毒の危険がある。
2. 生成される主な物質良い物質:アルコール、乳酸、酢酸、アミノ酸(旨み)、ビタミンなど。悪い物質:アミン類、揮発性硫黄化合物(悪臭ガス)、アンモニアなど。
3. 関わる微生物善玉菌:乳酸菌、酵母、麹菌、納豆菌など、特定の有益な菌。悪玉菌:腐敗菌、食中毒菌、虫歯菌歯周病菌など、有害物質を出す菌。

鍵は「微生物」!お口の中でワルサをする菌とは?

発酵も腐敗も、微生物が食品の成分(糖やタンパク質など)を分解・代謝することで起こります。このプロセスは科学的には同じなのですが、どの微生物が優勢に働くか、そしてその結果どんな物質が作られるかで、私たち人間にとっての呼び名が変わるのです。

  • 発酵:良い菌が働き、美味しいもの・健康に良いものが生まれる!
  • 腐敗:悪い菌が働き、不快なもの・体に悪いものが生まれる!

歯医者からの視点:お口の健康と「腐敗」

この「腐敗のメカニズム」こそ、虫歯や歯周病の原因そのものと言えます。

1. 虫歯菌による「歯の腐敗」

  • 食べ物の糖分(特に砂糖)を、お口の中にいる**虫歯菌(ミュータンス菌など)**が分解・代謝します。
  • その結果、**「酸」**という物質が作られ、これが歯の表面のミネラルを溶かします。
  • これは、食べ物が**「酸発酵」した結果、歯という組織が溶かされ始める、「歯の腐敗」**と捉えることができます。

2. 歯周病菌による「組織の腐敗」

  • 歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)に潜り込むのが、**歯周病菌(P.g.菌など)**です。
  • 彼らの主なエサは、食べカスだけでなく、炎症で出る血液や体液に含まれるタンパク質です。
  • 歯周病菌がこのタンパク質を分解(腐敗)する際に、メチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物という強烈な悪臭ガスを発生させます。
    • これは**「生ゴミや腐った玉ねぎ」のような、典型的な腐敗臭**です。
  • つまり、歯周ポケットの中で**「組織の腐敗」が進み、歯ぐきや骨を溶かしていくのが歯周病**なのです。

まとめ:清潔が「発酵」vs「腐敗」の勝敗を決める

お口の中を清潔に保つことは、善玉菌による「発酵」で恩恵を受ける腸内環境とは異なり、悪玉菌による「腐敗」を食い止めるために非常に重要です。

毎日の丁寧なブラッシングとフロスで、虫歯菌や歯周病菌にエサを与えないこと。そして、定期的な歯科検診とプロによるクリーニングで、彼らの住処(歯垢・歯石)を取り除くことが、お口の中の「腐敗」を防ぐための最良の手段です。

発酵食品の力を借りて全身の健康を高めつつ、お口の中は徹底的に「腐敗防止」を心がけましょう!

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